Cube Voyage

ルービックキューブの速いそろえ方、解き方、最速攻略法、解法、スピードキューブ、LBL法など

自分のMBLDのやり方(Y.Yさんからの寄稿)

目次

1. はじめに

ここでは自分がMBLD(複数目隠し競技)をどう行っているか、つまり25個のルービックキューブをどう記憶し実行しているか、そのために何が必要か、について細かく書いていければと思います。個数が多いので大多数の人にとっては参考にするのは難しいかもしれませんが、こんな風にやってるんだとでも思って頂ければ幸いです。

また、MBLDの基本的な知識については知ってる事を前提に書いていくため、よくわからない人は自分がCube Voyageに寄稿させて頂いた記事

MBLDを始めよう!

を参考にしてみて下さい。

ちなみに、過去にNRを取った方々も同様の記事を書いています。

MBLD解説  MBLDと4BLDについて

自分もこれらの記事を読んで勉強してきたので、参考になる部分はとても多いと思います。余力があれば是非読んでみて下さい。

2. ペース配分

まずは、実際に25個でMBLDを行った動画と、そのペース配分について表で示そうと思います。NRを取った際の動画はないので、自宅で24/25 59:09 を出した時のものです。

動画: https://youtu.be/uV96n7d7Sm8

  かかったタイム 合計タイム
1~5 個目 記憶・復習 4:38 4:38
1~5 個目 復習 1:36 6:14
6~10 個目 記憶・復習 5:16 11:30
6~10 個目 復習 2:09 13:39
11~14 個目 記憶・復習 5:16 11:30
11~14 個目 復習 1:19 19:06
15~18 個目 記憶・復習 4:30 23:36
15~18 個目 復習 1:50 25:26
1~18 個目 復習 8:39 34:05
     
19~23 個目 記憶・復習 5:11 39:16
19~23 個目 復習 1:43 40:59
24 個目 記憶・復習 1:28 42:27
25 個目 記憶 0:43 43:10
     
実行 15:59 59:09

記憶: 43:10 (1:43.6/個) , 実行: 15:59 (38.4/個) , 合計: 59:09 (2:22.0/個)

3. 記憶・復習

自分(を含め、おそらく大抵のMBLDer)は、どのキューブをどのタイミングで記憶し確認するかあらかじめ決めています。具体的にはこれから説明しますが、上の表を見れば大体どんなことをやっているのか雰囲気はつかめると思います。表に書いてあるフェイズ毎に、どのようなことを意識して記憶・復習しているのかについて書いていきます。

  • 1~5 個目 記憶・復習
    ここでは1つのキューブを記憶し、その直後に記憶を思い出して復習した後次のキューブに移る、という繰り返しで5個目までのキューブを覚えています。上の表でもわかる通りキューブを4,5個のブロックに分けており、5個目までが最初のブロックとなります。
  • 1~5 個目 復習
    1ブロック目の記憶・復習が一通り終わった後、ブロック内のキューブの記憶を再度思い出して復習しています。
  • 6~10 個目 記憶・復習 ~ 15~18 個目 復習
    以下6~10個目、11~14個目、15~18個目について同様に記憶・復習→復習の流れを繰り返し行います。
  • 1~18 個目 復習
    この繰り返しで最初の18個(5+5+4+4)を終えた後、その18個の記憶をもう一回一通り復習し(忘れている部分については念入りに確認し直し)、最後のブロックに移ります。
  • 19~23 個目 記憶・復習 ~ 19~23 個目 復習
    最後のブロックについても他のブロックと同様に(記憶・復習)×5 →復習、の流れを行います。他のブロックと違うのはこれが最後の復習になるということです。その代わりこのブロックは前半のブロックよりも実行を先に行っています。こうすることで復習の数を一回減らすことができ、タイムの短縮に繋がります。
  • 24 個目 記憶・復習
    最後の2個は最後のブロックよりも先、つまり最初に実行します。初めに記憶する方は場所法を使って他のキューブと同様に記憶→復習を1回のみ行います。
  • 25 個目 記憶
    最後のキューブは3BLDと同様に(3BLDの時よりは念入りに)記憶し、目隠し後すぐに実行します。
  • 実行
    実行の順番は上で説明してきた通りで、25→24→19~23→1~18、となります。ブロック内のキューブは覚えた順に実行します。
    (動画では、11~18個目のキューブを実行した後1~10個目を実行しています。ただ、その後1個目から順に18個目まで実行するやり方に変えました。どっちの方がいいかはよく分かりませんが、復習量が同じなら記憶順に実行するのが、記憶・実行間の時間のばらつきが無くなっていいのかな、と考えています。)

ちょっとややこしいですが、記憶の薄い物=復習回数の少ないものを先に実行するという原則を考えれば、それほど違和感のない順番なんじゃないかなと思います。
(ちなみにこの順番の工夫は、MaskowのWR動画を参考にしています。個数は全然違いますが……)

以下、分析・記憶・復習に分け、それぞれで気を付けていることについて書いていきます。

<分析>
分析で気を付けるべきことは、とにかく分析ミスをなくすということです。当然のことですが、意外と起こってしまうものです。よくあるミスとしては、ステッカーと文字の対応ミス、ループの終点ミス、EOCO忘れ(特にEO)が挙げられます。

ステッカーと文字については慣れるしかないです。3BLDを練習しましょう。

ループの終点ミスについては、気を付けていればそこまで起こらないと思います。終点を1文字多く数えてしまうミスの場合は、エッジとコーナーのパリティの有無からミスを判断することが出来ますが、コスパが悪いと考え自分は使ってないです。

EO(CO)忘れについては、分析したパーツは指で押さえて分析漏れをなくすようにしています。といっても全部しっかり押さえるのは厳しいので、途中までは指で押さえ残りは割とノリで確認していることが多いです。

<記憶>
具体的な記憶の方法については、最後の1個以外は場所法を用いて覚えています。4文字を一つの場所に割り当てる、例のやり方です。
(4文字を一つの場所に置くやり方はイメージが作りやすくかつ確実性が高いですが、場所を何度も移るため少し時間がかかってしまうという欠点があります。そのため、速度が伸び悩んでいるという人は一つの場所に置く文字数を増やしてみましょう。エッジを約6文字ずつ2つの場所に、コーナーをすべて1つの場所に置くのがやりやすいです。慣れたらエッジを全て1つの場所に置いてみてもいいと思います。世界トップ層はそうしています。)

記憶の際のストーリーの作り方について気にしていることについては、こちらの記事に自分が言いたい事がだいたい書いてあります。

イメージしやすいレターペアを用いてイメージしやすいストーリーを作るのはもちろん大事ですが、分析したストーリーに対して何かしらの感情を持つことや、ストーリー間もしくはストーリーと場所との論理的な繋がりを考えることで、より覚えやすい記憶になってくるのではと考えています。また、場所法を使う際は、作ったストーリーをちゃんと場所に結びつけることを意識するといいと思います。これを忘れると、ストーリーがなかなか覚えられなかったり、実行の際場所に何もストーリーが置かれてなくて思い出すのに時間がかかったりします(自分もよくやります。特に急いでいる時)。

<復習>

復習については特に強く意識していることは無いです。なるべくキューブを見ないで思い出せるように記憶の段階から努力しています。復習に関して強いて言うならば、前半のキューブについては何度も復習するため、序盤の復習では多少記憶の漏れがあっても気にせずすぐ(といっても多少は思い出そうと努力しますが)キューブを見るようにしています。あらかじめ何秒思い出せなかったらキューブを見る、というように決めておくといいかもしれません(なかなか厳密に実行するのは難しいですが……)。

4. 実行

自分は全て3cycle手順を使っています。実行が速いほど記憶に時間が割けるので2cycleよりは3cycleの方がいいのはもちろんですが、手順を思い出すのに時間や頭を使っていると結局あまり時間が変わらない、それどころか記憶を忘れたり回し間違えたりということになりかねません。また、3cycleに相当慣れていないと、急いで回した時に無意識に手順を回し間違えてしまう事があります。自分も練習の際、記憶のミスと同じくらいの頻度でこの回し間違いによる実行ミスが起こっていました(Maskowも、DNFの原因は実行ミスだけだと言っています)。

ですから3BLDで3cycle手順を練習してある程度慣れてからMBLDに導入するのがいいと思います。3bldでsub50が頻繁に出せれば最低限ぐらいかな、と思っています(自分がMBLDで3cycleを使い始めたのがこれくらいの時期でした)。もちろん個人差はあるので、自分で使ってみて判断するのがベストです。

一応、3cycle手順のミスを減らす方法として、記憶したステッカーを指で押さえてから手順を実行する、というのがあるかもしれません。しっかり押さえていると結局ロスになるので、間違えやすいものについて軽く、程度であれば使ってみる価値はあるのかな、と思います。

5. 練習法

自分がMBLDについての練習でやってきた事をここに書いていこうと思います。といっても、3BLDが速くなれば自然とMBLDの個数も増えていきます。分析・実行の技術が上がり時間や頭を使わなくなっていくからです。自分も、以下のような練習の工夫はMBLDで20個出来るようになるまでは全然しておらず、MBLDの大会の直前に通し(大会で実際にやる個数)で何回か練習するのみでした。従って以下の練習をするのは3BLDで伸び悩んでいるか、またはMBLDのモチベーションが高い時でいいと思います。

・場所定着練習
場所法を使う場合、初めのうちはキューブの記憶より、そもそも場所自体が思い出せず苦労すると思います。もちろんMBLDを繰り返し行えばだんだん身に付いてきますが、場所を定着させるためだけに1時間頭をフル回転させるのは割に合わないですよね。そこで自分は、新しい場所を設定した際はキューブを2個使い、1個目は場所法で覚え2個目は3BLDと同様に覚える、という練習を行いました。2個使ったのは場所法をちゃんと使って覚えているかの確認のつもりですが、場所の定着のみの目的であれば1個で練習しても十分かもしれないです。

・ブロック単位の練習
ここまでの説明の通り、記憶ではキューブをブロック毎に分けています。そこで、練習ではブロック単位で(場所法の場所も合わせて)記憶・復習→復習を行い、その後1個キューブを記憶し、実行するという練習を行っていました。つまり、4個のキューブがあるブロックの練習では5個のキューブを揃える、ということです。25個を1時間で揃えられる人なら、5個であれば10分かからないと思うので、気軽に出来ます。

実際のMBLDで使う記憶に近いやり方で記憶するため、より実践的な練習になります。1時間かけて本番と同じ個数で練習するのももちろん大事ですが、連日練習するのは流石に体力・時間的に厳しいので、自分は週一でしか通しでやらない代わりに、普段はこういった練習をしていました。

6. その他いろいろ

・集中力
MBLDでベストな結果を残すためには、1時間の間集中力の高い状態を維持し続けなければなりません。疲れていると、途中で何も(場所すらも)思い出せなくなる事があります。ちゃんと体調を整えるのが一番ですが、本番でそういう状態になったらもうしょうがないので、焦らず諦めずに少し深呼吸して間を置くといいです。

・使用するキューブが記憶に与える影響について
キューブを1個1個変えると、場所法と同じ原理で覚えやすくなるのかな、と疑問に思う人がいるかもしれません。自分も昔はそう考え、場所とキューブの種類を対応付けていた時期もありました。結論から言うと、細かい種類の違いは記憶にほとんど影響しません。適当な順番で覚えていけばいいです。ただ、素体色やステッカーレスなどといった、明らかに視覚的な違いがあれば、ちょっとは記憶の差別化ができるかもしれないです。

自分は、ステッカーレスのキューブを二つ(パステル・ブライト)用意し、それぞれを場所法で忘れやすい場所の部分に対応させています。記憶する際はステッカーレスという視覚的情報により場所を思い出し、実行する際はステッカーレスの感触により場所を思い出しています。

・実行後のキューブの置き方

普通は、解き終わったキューブはまだ解いていないキューブとは別の所に適当に置いておくと思います。ただ、動画を見ればわかると思いますが、自分は解き終わったキューブは元の位置に戻すようにしています

適当な場所に置く場合、まだ実行してないキューブと区別するためにできるだけ自分から遠くに置きたくなりますが、もしスペースが狭いとそれが難しくなり、机から落下してしまうことも考えられます(アジア大会2016の2試技目で発生)。また、逆に実行していないキューブをより自分の近くに置こうと意識するあまり、近すぎて実行中に手がキューブに当たってしまい、キューブを見失ったり開始面がずれたり(日本大会2016で発生)、といったことも起きかねません。

そこで、自分は解き終わったキューブは元々置いてある位置に戻すようにしています。キューブが置いてある場所からどのキューブが解き終わっていないか判断することはできませんが、どこまで自分が実行したかという情報は脳内にしっかり入っているので、どのキューブを実行していないかは簡単にわかります。キューブをきれいに並べておけば、実行中のキューブが置いてあった場所にはスペースができ、そして大体の場合解き終わったキューブと次に実行するキューブは隣り合っているので、次のキューブがどれか迷うことはそこまで多くないと思います。そして最大の利点は、与えられたスペースが狭くても不安なしに試技を行えるという点です。動画のように汚い机の上でも行えます。まあ普通は十分のスペースは与えて頂けると思いますが、それでも安心感は違ってくると思います。

以上の点で、自分はこのやり方をお勧めしています。他にやっている人を見たことがないので、やってみた人がいたら是非感想を教えてください。

7. おわりに

MBLDは他のキューブ競技に比べ、やり方や練習法が全然確立されていません。人口が少ないというのが一つの理由ではあると思いますが、それに加えて記憶はその量・質共に個人差が大きく、それに応じて個人に適した練習方法も異なってくるということも理由として挙げられるのでは、と考えています。

一番大切なのは、個数に応じたMBLDのやり方や練習方法を自分で考え実践することです。この記事がそのきっかけに多少なりともなっていればいいのですが、個数の違いもあるので難しいですよね。そこまで行かなくとも、雰囲気程度でも感じ取って頂けたのであれば嬉しいです。

(2017/5/13(2018/3/22 ちょっとだけ加筆) 執筆者:Y.Y)

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