MBLDを始めよう!(Y.Yさんからの寄稿)
目次
・初めに
・競技の流れ・ルール
・必要な物
・解き方
・覚え方
・最後に
・参考になりそうなサイト
初めに
こんにちは。目隠し競技(3BLD,4BLD,5BLD,MBLD)をメインでやっているY.Yという者です。この記事では、その中でもMBLD(複数目隠し競技)について、参加し記録を残すために必要な技術・知識について一通り書いていこうと思います。
MBLDが開催される大会は少なく、また他の競技とはルール的に一線を画しているため、なかなかとっつきにくいと思われる方もいるかもしれませんが、3×3を目隠しで(それなりの速さで)解くことが出来る人であれば、それにプラスして必要な知識はそれほど多くありません。その点では、多分割のBLD(センター・エッジを解く際に特殊な知識が必要になります)よりは始めやすいと個人的に考えています。そしてこの記事を読めば、MBLDに必要な知識は手に入ります。
注意点ですが、この記事は3×3を1個なら目隠しで解けるという人向けに書いてあるため、そういった知識は持っていることを前提として説明せずに書いていきます。難しい、という方はCube Voyageに記事が充実しているので、一通り読んで勉強してみて下さい。
競技の流れ・ルール
MBLDは、複数のキューブを一気に覚えてから目隠しをし、目隠ししてからは一度もキューブを見ることなく揃える、という競技です。といってもなかなか想像付かないと思うので、実際に直近の日本国内の大会で行われた試技の動画を載せておきます。
実行パートしか撮影していないですが、大まかな流れ、会場の雰囲気など何となく参考になれば幸いです。
競技の流れを説明すると、まず競技者は競技前に一度に解くキューブの数をジャッジに申請し、その数のキューブを渡します。その後、スクランブルされたキューブが覆いの下に隠された状態で登場します。競技者の試技開始の合図(あらかじめジャッジと打ち合わせておくのがいいと思います。手を机から離す等)と同時にジャッジがストップウォッチをスタートさせます。その直後競技者は覆いを外しキューブを覚えていきます。全てのキューブを覚え終わったら、目隠しをしてから実行に移ります。実行が終わったら手を机に置くなり目隠しを外すなりして、その時点でタイマーストップします。記録は、[その時点で揃っている個数/申請した数,計測した時間] という風に記載されます(例:4/4,10分)。
MBLDには制限時間が設けられており、5個以下であればキューブの数×10分(2個なら20分、4個なら40分)、それ以上なら60分、となっています。制限時間を超えると強制的に試技は打ち切りとなり、その時点でのキューブの状態が記録に反映されます。時間内にキューブを覚えて解くところまで間に合わせないといけないため、どれくらい記憶に時間をかけていいかは実行にかかる時間との兼ね合いで変わってきます。そのあたりの駆け引きもMBLDで重要な要素になってきます。
MBLDでの記録の優劣は基本的に個数で行います。個数と言っても単純に揃えられた数ではなく、最終的に成功した(揃った)数-失敗した(DNFだった)数で比較します。例を挙げると、[4/4,10分]と[5/7,30分]では、前者は4-0=4、後者は5-2=3、となり、前者の方が上の記録となります。1個失敗すると個数としては2個マイナスされてしまい、差がマイナスになるとDNFになってしまう(0ならセーフ)ので、いかに失敗しないかというのがMBLDでは重要になってきます。ただ、多少ミスしても記録が残るというのは他の記憶競技にはない特徴ですね。
(補足として、1/2では1-1=0でギリギリ記録が残りそうに思えますが、この場合は結局1個しか揃えていないため、特例としてDNFとなります(2/4なら記録は残ります)。そのため、MBLDで記録を残すことだけを考えている場合は4個で申請し、2個は最初から捨てておいて残りの2個成功させるのが一番簡単です。2個のみで申請する場合よりも制限時間が20分増えます。)
そして算出された個数が同じ場合は、次に時間で比較します(一応、時間も並んだ場合は成功率により比較します)。[4/4,20分]と[5/6,15分]では後者の方が上です。そのため可能な限り速く解くというのも大事ですが、急ぐと失敗する確率も上がるので、忘れないように記憶し、かつ回し間違えないように慎重に実行する、ということがMBLDでは大事だと考えています。
必要な物
基本的に、3BLDで必要な物があれば大丈夫です。具体的には、アイマスク(絶対必要)・耳栓(必要であれば。長時間の競技なので、3BLDよりも必要性は上がってくると感じています)、ぐらいですかね。
そして、一番大事なのが解く数の分のキューブです。といってもMBLDでは解くスピードはそこまで要求されないので、よっぽど回しにくかったり、回転が軽すぎて意図しないところまで回ってしまったりしなければ大丈夫だと思います。過去に使っていた競技用キューブや、500円で買えるキューブ(個人的にはQiYi QiHangをおすすめします)で全然問題ないです。
・解き方
3BLDで用いているものと同じで大丈夫です。コーナー・エッジを解く順番もわざわざ変える必要はないです。
ただCOCPEOEPといった昔の解法を使っている場合は変えたほうがいいです。以降の解説でも、ステッカー記憶をしていることを前提に話を進めます。
・覚え方
3BLDでどういった記憶法を使っているかは人それぞれだと思いますが、MBLDではレターペアを用いたイメージ記憶がベストだと考えています。理由は単純で、様々な記憶の方法の中で一番忘れにくいからです。
また、大量のイメージから大量のストーリーを作って覚える際、「場所法」という技術がとても効果的です。あらかじめ自分が知っている場所を順番に用意しておき、その場所にストーリーを配置していく、というやり方です。想像が付かない人も多いと思いますが細かく説明していくと長くなってしまうので、以下のサイトを参考にするとわかりやすいです。
場所法をMBLDで利用する場合、上のサイトにもある通り1つのキューブには5つの場所を割り振るのが一番楽だと思います。1つの場所に基本的に4文字(レターペアを用いると2文字で1つのイメージを作るので、2つのイメージでストーリーを作ります)からなるストーリーを置きます。
場所はあらかじめエッジ用に3つ、コーナー用に2つ割り当てておきます。普段3BLDで実行する順番がエッジ⇒コーナーであれば、分析の順番もエッジ⇒コーナーとし、その順番で用意した場所にストーリーを置いていくのが混乱しにくくおすすめです(3BLDとは分析の順番が逆になるので注意が必要です)。以上を整理すると、5つ用意した場所のうち、前半3つがエッジ用、後半2つがコーナー用、ということになります。
もちろん1つの場所に入れる文字が4文字で収まらない場合もあります。その場合はエッジ・コーナーそれぞれの最後の場所に無理矢理詰め込みます。例えば、エッジ13文字コーナー7文字のスクランブルでは、3個目の場所に5文字、5個目の場所に3文字入れることになります。
上のやり方を使うと、場所法でMBLDを覚える際には揃える数×5個の場所が必要になり、これをあらかじめ準備し、覚えておく必要があります。大変ですが頑張って用意しましょう。初めのうちは、分析中にそもそも場所を思い出すのも大変だと思いますが、繰り返し同じ場所を使っているとだんだんと慣れていきます。
ちなみに、最後の1個を場所法を用いずに3BLDと同様に記憶し目隠し後すぐ実行することで、必要な場所と時間を減らすことが出来ます。ただ、3BLDでそこそこ安定して揃えられない場合、DNFのリスクがかなり上がりもったいないので、時間と手間をかけてでも場所法で覚えたほうがいいと思います。
また、3BLDでEO・COをビジュアル記憶で覚えている人がいると思いますが、MBLDでビジュアル記憶をするのはとても難しいです。分析の際、覚えている文字列に二文字追加して考え、イメージ記憶に組み込むのが一番安定すると思います(参考:世界チャンピオンが教える!ルービックキューブ目隠し 20 CO)。記憶量は増えてしまいますがしょうがないですね。
最後に
いかがでしょうか。思ったよりも簡単だな、と思う人もいればやっぱりよくわからない難しそう……って感じる人もいると思います。どちらにせよ、一回自分でやってみることをおすすめします。2個であれば、前述の通り場所は1個用意すれば済みます。最初はもちろん難しいですし頭も疲れますし時間もかかりますが、何回かやっていると分析の順番や復習するタイミング、そして自分が作った場所にも慣れていき、ちょっとずつタイムは縮んでいくと思います。もし行けそうだなと思ったら、どんどん個数を増やしてチャレンジしていきましょう。目を開けた時に目の前のキューブが全て揃っていた時の達成感は格別です。
MBLDのある大会は日本全国でも1年に2,3回と少ないですが、もし機会があったら是非出てみて下さい。人口が少ないので、成功させればそれなりの順位になりますし。
参考になりそうなサイト
それぞれ元元NR保持者・元NR保持者がどのようにMBLDを行っているか書かれた記事です。個数が多いですが、復習するタイミング等参考になる点はあると思います。
場所法、それを用いた記憶のコツについて丁寧に書かれた記事です。なかなか覚えられないと思ったらここを読み込んでみると、参考になるかもしれません。
(2017/04/05 執筆者:Y.Y)